JBWSS

[JBWSS2025]講演内容要約②

講演者:犬飼 直之 氏(長岡技術科学大学 准教授/水難学会 事故調査委員長)

テーマ:水辺の安心のための工学的手法

1.工学的立場からのアプローチ

犬飼氏は自身が工学部出身であることを紹介し、力学的視点から水辺の安心・安全に取り組む姿勢を強調した。今回のJBWSSのテーマ「水辺の安心を未来に紡ぐ」に基づき、水環境の保全から地域づくりまで、幅広い視野での取り組みが重要だと述べた。

2.安心な水辺に必要な5つの視点

  1. 水環境の保全と再生
    水辺は生物多様性の宝庫であり、湿地の保護や河川浄化が重要。
  2. 地域の防災と安全
    多様な災害リスク(洪水・津波・豪雪等)への備えとインフラ整備の必要性を指摘。
  3. 持続可能な水の利用
    浄水システムや雨水活用など、私たちの生活を支える水資源の持続的管理。
  4. 地域社会の教育啓発
    新潟県での海岸清掃イベントの事例を紹介し、住民参加による意識向上を提唱。
  5. 共生と地域づくり
    行政・企業・住民の連携による地域特性を活かした水辺空間の創出。

3.工学的な視点からの事故防止

  • 水辺の事故はレジャー中だけでなく、作業中や日常でも発生している点を指摘。
  • 特に構造物が多くを占める海岸では事故リスクが高く、人が溺れるメカニズムを力学的に分析することで、事故原因の特定と対策提案が可能であるとした。

4.調査とシミュレーションによる支援

  • ソナーやドローンによる現地調査や、津波のシミュレーション技術を活用し、到達時間や浸水範囲を可視化。
  • 能登半島地震の事例を紹介し、科学的根拠に基づいた地域支援の重要性を説明。

5.行政・住民との連携と将来へのメッセージ

  • 調査・分析の成果は、行政や住民との連携により実践に活かされていると報告。
  • 最後に、若い世代が工学的な視点から水辺の課題に取り組む意義を伝え、講演を締めくくった。