講演者:斎藤 秀俊 氏(長岡技術科学大学 教授/水難学会 理事)
テーマ:「ういてまて」を科学で説明すると、船長もガッテン!
1.見えている「つもり」が事故を生む
斎藤氏は、水難事故の根本原因の一つとして、視覚的錯覚(イリュージョン)を挙げた。特にプールでは、監視員が「見えている」と思っていても、実際には光の反射により水中が見えていないことが多く、これが事故の見落としにつながると指摘。
2.水面の光反射と視認性の限界
- 水と空気の屈折率の違いにより、水面は鏡のように光を反射する。
- 曇りの日などでは特に視界が悪くなり、10メートル離れたプールの底に沈んだ人は見えなくなるという実例を紹介。
- 水泳指導中であっても、溺れている子どもに気づけない可能性があると述べた
3.「浮いて待て」の重要性
水難学会が推進する「浮いて待て」運動に触れ、浮いていることで救助・発見が容易になることを強調。見つけてもらうまでの時間を生き延びるためにも、「浮く」ことの教育が重要であると述べた。
4.偏光サングラスの有効性と開発状況
- 通常のサングラスと偏光サングラスの違いを解説。偏光レンズは水面反射をカットし、水中の視認性を大幅に向上させる。
- 現在、水難対応専用の「人を見つけやすい偏光サングラス」を開発中であり、従来の「魚を見るための設計」とは異なる設計思想であると説明。
- 来年度の展示会での発表を予定しており、救助・監視用途に最適化された製品であることをアピールした。
5.質疑応答から見える活用の広がり
- レンズ交換式偏光サングラスの開発要望に対しては、ライフセービング分野への活用に期待を示した。
- 学校現場での導入可能性については、「早期発見こそが命を守るカギ」であるとし、教育現場や監視体制への普及の意義を強調した。