講演者:遠山 純司 氏(公益社団法人 日本水難救済会 理事長)
テーマ:子どもたちに安全に海のすばらしさを伝えるために
1.自己紹介と海上保安官としての歩み
遠山氏は、熊本県出身で海上保安大学校を卒業後、約40年間にわたって海上保安官として勤務。巡視船や本庁(霞が関)、フィリピン勤務、内閣官房内閣情報調査室での国際情勢分析、尖閣諸島領海警備船隊の指揮官、管区海上保安本部長等を歴任
印象的な経験として以下を紹介:
- プルトニウム海上輸送の護衛任務
- ナホトカ号油流出事故対応
- フィリピン沿岸警備隊人材育成支援
2.日本水難救済会の歴史と活動
- 明治22年、ノルマントン号事件を契機に設立。現在は高円宮妃殿下が名誉総裁
- 全国に約1,300か所の救難所があり、約5万人のボランティア救助員が海難救助に従事
- 世界で唯一の洋上救急を運営するとともに、海の安全教室等を積極的に実施
3.水難事故防止に向けた連携と取り組み
- 海上保安庁や日本ライフセービング協会との連携強化によって、事故要因の検証や再発防止策の普及に取り組んでいる
- 特に重要視しているのは以下の3点:
1. 事故防止への国民の意識向上
2. 事前の備え
3. 適切な対処法の確立
4.水難事故の現状と教育の必要性
- 水難事故の発生件数・死傷者数は依然として減少傾向にない
- 主な課題は、①意識の低さ、②備えの不足、③正しい対処法が定着していないこと
- 家庭・学校・地域社会における日常的な安全教育の重要性を強調
5.海での安全な行動と事故時の対処法
【海で遊ぶ前の準備・注意点】
- 天候の確認/場所の選定/体調管理/連絡手段の確保
- ライフジャケット・マリンシューズ着用/スローロープの携行
- 膝下の浅瀬でも油断せず、常に子供と一緒にいること
【危険を回避するための対処法】
- 大の字背浮きの姿勢では、波や流れのある海や川では呼吸を確保することが困難
- ライフジャケットを着用して浮力を確保することが必要
- 周囲の状況により、イカ泳ぎ等の得意な泳ぎで岸に向かう判断
- 流された人への対処の際、浮き具やライフジャケットなしに飛び込み救助するのは極めて危険
6.未来へのメッセージ
- 事故防止のための国民の意識を高め、正しい知識・手法を確立し、全国に普及・定着させるしくみが必要
- それにより、子どもたちが海に親しみ、海を守り、海から日本を支える人材に育つための環境を整備する
- 「海の素晴らしさを、事故なく体験し、次世代に引き継ぐ」ため、広く賛同と協力を呼びかけて講演を締めくくった